令和の世~人はなぜ旅に出るのか?

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令和時代のテーマ旅行「人はなぜ旅に出るのか?」

奥の細道の終着点

奥の細道の終着点

「人はなぜ旅に出るのか」と問われれば、私は「人生がただ一度であることに対する抗議」と答えたいと思います。
すなわち、人生は一度限りの旅ですから、無限の可能性の中から1つしか選べず、生まれた土地で一生を過ごすことも1つの選択ですが、やはり別の土地で生きる自分の姿を思い描いてみたいと、漂泊の思いにかられて旅に出るのです。
昔は長男には家を継ぐ使命があり、長男として生まれた以上は、生まれ故郷から離れることはかなわず、旅に出るにも制約がありました。
私と同じ三重県出身の『奥の細道』の作者である松尾芭蕉や北海道の命名者として知られる幕末の探検家、松浦武四郎も共に長男ではなかったので、旅を住処とすることができたのだと思います。
私は長男の身でありながら稼業は弟に任せ、自らは好きな旅行業に身を置いていますが、そんな私にとっても旅に出る行為は、単なる仕事ではなく、人生がただ一度しかないことへの挑戦であり、異郷の地でその土地の人と交流し、見聞・観察しながら新たな気付きと感動を見出す創作活動で、この活動から新たなテーマ旅行の企画を考えているのです。
言い換えれば私の旅は、これまで自分が生きてきた「物語」と旅先での「物語」とが織りなす新たな「ストーリー」の創造です。

心に灯をつける旅が令和時代のテーマ旅行

「奥の細道」での松尾芭蕉

「奥の細道」での松尾芭蕉

そして、この「ストーリー」の創造に必要不可欠な要素が「テーマ」であり、また、テーマのある「歴史物語」を旅すれば、記憶にも残りやすいのです。

私の経験から言えば、この「テーマ」が明確であればあるほど、価値ある「出会い」が生まれ、そしてその「出会い」が「時の流れの忘れ物」として心に残ることから、必ずまたもう一度訪れたい、もっと探求したいという気持ちが湧いてくるのです。

私はこの人の心に灯をつける「再訪」の想いと「探求心」という情熱こそが「テーマ旅行」の醍醐味であり、テーマを持った旅人の特権だと思っています。
逆にこのような好奇心が生まれない旅は、真のテーマ旅行ではありません。
松尾芭蕉の旅も俳句をテーマとした旅であり、門人との悲喜こもごもの「出会い」から、「かるみ」という理念が生まれ、素晴らしい名句を今日に残してくれているのです。

そして長い年月を経て故郷に戻り、家族や親しい者、旧友と再会して無事を確かめあい、懐かしい景色に心を打たれる瞬間、帰郷という「再訪の旅」を喜ぶのが真の旅人なのです。

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