人はなぜ旅に出るのか?
「人はなぜ旅に出るのか」と問われれば、私は「人生がただ一度であることに対する抗議」と答えたいと思います。
すなわち、人生は一度限りの旅ですから、無限の可能性の中から1つしか選べず、生まれた土地で一生を過ごすことも1つの選択ですが、やはり別の土地で生きる自分の姿を思い描いてみたいと、漂泊の思いにかられて旅に出るのです。
私は旅行業に身を置いていますが、そんな私にとっても旅に出る行為は、単なる仕事ではなく、人生がただ一度しかないことへの挑戦であり、異郷の地でその土地の人と交流し、見聞・観察しながら新たな気付きと感動を見出す創作活動で、この活動から新たなテーマ旅行の企画を考えているのです。
言い換えれば私の旅は、これまで自分が生きてきた「物語」と旅先での「物語」とが織りなす新たな「ストーリー」の創造です。
そして、この「ストーリー」の創造に必要不可欠な要素が「テーマ」であり、また、テーマのあるを旅すれば、好奇心が生まれると同時に記憶にも残ります。
私の経験から言えば、この「テーマ」が明確であればあるほど、価値ある「出会い」が生まれ、そしてその「出会い」が「時の流れの忘れ物」として心に残ることから、必ずまたもう一度訪れたい、もっと探求したいという気持ちが湧いてくるのです。
私はこの人の心に灯をつける「再訪」の想いと「探求心」という情熱こそが「テーマ旅行」の醍醐味であり、テーマを持った旅人の特権だと思っています。
逆にこのような好奇心が生まれない旅は、真のテーマ旅行ではありません。
松尾芭蕉の旅も俳句をテーマとした旅であり、門人との悲喜こもごもの「出会い」から、「かるみ」という理念が生まれ、素晴らしい名句を今日に残してくれているのです。
そして年月を経て故郷に戻り、家族や親しい者、旧友と再会して無事を確かめあい、懐かしい景色に心を打たれる瞬間、帰郷という「再訪の旅」を喜ぶのが真の旅人なのです。
人生100歳時代と言われていますが、充実した人生を送るためにはこの好奇心を刺激し、出会いを求める旅が必要不可欠だと思います。
テーマの旅を実践した芭蕉さん
今日の旅行は、快適を求めるレジャーが中心になっていますが、本来「旅」という言葉は、
・食べ物を乞う「給べ(たべ)」
・他人の竈で調理された食べ物を食べる「他火」
と言った言葉が語源とされ、異国で囲炉裏の火(他火)を囲んで土地の人と触れ合い、不安を克服していく冒険的要素がありました。
すなわち昔の旅は危険と隣り合わせで、俳聖松尾芭蕉も俳諧に対する求道精神から、決死の覚悟で『奥の細道』の旅に出たのです。
しかし、芭蕉の禅の師、仏頂和尚ゆかりの栃木県黒羽においては、門人の桃雪らに歓待され、温かいもてなしを受けたこともあり、黒羽以降は芭蕉にもゆとりが出てきたようです。
特に奥州街道の山道に難渋しながらも、那須町芦野にある西行が詠んだ「遊行柳」の前に立ったときは、西行に私淑する芭蕉にとっては至福の喜びだったと思われます。
『奥の細道』の旅は1689年で、これは西行法師の500年忌にあたっており、芭蕉は西行法師を強く意識して旅をしましたが、当時は「旅する職人」のことを「西行」と呼んでいました。
職人は修業を積んだ後、旅まわりをして腕をみがきましたが、これを「西行」に出るといったのです。
芭蕉は俳句の腕をみがく「西行」に出て、「遊行柳」のような西行ゆかりの地を訪ねるというテーマの旅をしていたのです。
私は「奥の細道」や「街道歩き」の旅を企画した際、芭蕉の足跡を訪ねて、日光街道、奥州街道など旧道の残っているところは出来るだけ歩き、芭蕉の気持ちになって旅してみました。
そして気がついたことは、芭蕉は西行の旅の仕方や目的地を真似ただけでなく、西行が
「どのような気持ちで、その地を訪れたのか?」
「その時、頭の中で何を考えて歌を詠んだのか?」
といった、西行の「頭の中で起こっていたこと」まで考えて旅をしていたことです。
このことから、「奥の細道」の旅を楽しむ秘訣は、芭蕉さんの足跡をたどるだけでなく、「その地で芭蕉は何を想い、どのような気持ちで句を詠んだか」をイメージすることだと思います。
この推敲し、イメージしながら旅を楽しむのが平成芭蕉が提案する「令和の旅」です。
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